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認知症

記憶や判断力が少しずつ失われ、生活に支障をきたす脳の変化

もの忘れや判断力の低下(中核症状)に加え、不安や興奮(BPSD)などが現れることがあります。ご本人に合わせた治療と周囲の理解、適切な対応が大切です。

  • 新しいことを覚えられない
  • 日時や場所がわからない
  • 順序だてて行動できない
  • 言葉がうまく出てこない
  • 慣れた動作ができない
  • 人や物を見ても認識できない
  • 落ち着きがなくなる
  • 気分が落ち込む

認知症って、どんな病気?

認知症は、誰にでも起こりうる脳の病気の一つです。以前は「痴呆症」と呼ばれていましたが、現在は「認知症」という名称が使われています。

私たちの脳は、まるで巨大な図書館のようなものです。若い頃は司書さん(脳の機能)が元気で、たくさんの本(記憶や情報)をきちんと整理し、必要な時にすぐに取り出してくれます。しかし、認知症になると、この司書さんの働きが少しずつ弱まってしまいます。本の場所を忘れてしまったり、新しい本をうまく整理できなくなったり、どの本棚に何があるかわからなくなったりするのです。

その結果、「新しいことを覚えられない」「今がいつで、ここがどこか分からなくなる」といった症状(中核症状といいます)が現れます。そして、そうした脳の変化を背景に、ご本人の性格や周りの環境との関わりの中で、不安になったり、怒りっぽくなったり、眠れなくなったりといった、心の状態や行動の変化(BPSD:行動・心理症状といいます)が見られることもあります。

大切なのは、認知症は「年を取ったから仕方ないただの物忘れ」ではなく、治療や支援が必要な病気だということです。そして、ご本人が好きでそうなっているわけでは決してありません。脳の病気がそうさせているのだと理解することが、ご本人とご家族にとっての第一歩になります。

孤独な老人

認知症の症状は、大きく分けて2種類あります。脳の細胞が壊れることで直接起こる「中核症状」と、それに伴って現れる「BPSD(行動・心理症状)」です。

中核症状:脳の働きが低下することで起こる症状

これは、病気の原因にかかわらず、認知症の患者さんに共通して見られる症状です。

症状の種類具体的な例えと説明
記憶障害ついさっき話したことを忘れる、食事をしたこと自体を忘れるなど、体験全体を忘れてしまうのが特徴です。
古い記憶は比較的保たれやすいです。
見当識障害今が何月何日か、朝か夜か(時間の見当識)、自分が今どこにいるのか(場所の見当識)、目の前にいる人が誰なのか(人物の見当識)が分からなくなります。
実行機能障害料理の手順が分からなくなる、買い物で何を買うか計画できないなど、段取りを立てて物事を実行することが難しくなります。
理解・判断力の低下複数の情報が重なると混乱する(テレビを見ながら話ができない)、いつもと違う出来事に対応できない、複雑な話が理解できないといった状態です。
失語・失行・失認失語
物の名前が出てこない、言葉がうまく話せない。
失行
服の着方がわからない、道具の使い方がわからないなど、体の機能に問題はないのに動作ができない
失認
見えているのにそれが何か認識できない(例:ハサミを見ても使い方がわからない)。
認知症のイメージ

BPSD(行動・心理症状):中核症状に付随して起こる症状

BPSDは、中核症状を背景に、ご本人の元々の性格、身体の状態、そして周りの環境や人間関係などが複雑に絡み合って現れます。適切な対応によって改善する可能性が高いのが特徴です。

症状の種類具体的な症状の例
不安・焦燥・興奮理由もなく不安そうにする、落ち着きなく歩き回る、急に大声を出す、怒りっぽくなる。
うつ状態・無気力好きだったことに関心がなくなる、一日中ぼーっとしている、気分が落ち込んでいる、「もうダメだ」と悲観的になる。
妄想「財布を盗られた」(物盗られ妄想)、「家に知らない人がいる」など、事実ではないことを強く信じ込んでしまう。
幻覚そこにいない人が見える(幻視)、聞こえないはずの声が聞こえる(幻聴)。
特にレビー小体型認知症では、リアルな幻視がよく見られます。
睡眠障害昼夜が逆転してしまう、夜中に何度も起きる、夜中に大声を出して騒ぐ。
徘徊明確な目的がなく、あるいは何かを探して外を歩き回ってしまう。
介護への抵抗入浴や着替えなどを頑なに拒否する。

これらの症状は、ご本人からのSOSのサインであることが多いです。「なぜこんなことをするのだろう?」と考えるのではなく、「何に困っているのだろう?」「何を感じているのだろう?」と、その背景にあるご本人の気持ちを想像することが大切です。

認知症は、単一の病気ではありません。さまざまな原因となる病気によって、脳の神経細胞が壊れたり、働きが悪くなったりすることで発症します。原因によって症状の現れ方や進行の仕方が異なります。

認知症の種類特徴
アルツハイマー型認知症認知症の中で最も多く、全体の6~7割を占めます。
脳にアミロイドβタウという特殊なたんぱく質がたまることで、神経細胞が壊れていきます。
記憶障害から始まり、ゆっくりと進行するのが特徴です。
血管性認知症脳梗塞や脳出血など、脳の血管の病気が原因で起こります。
脳のダメージを受けた場所によって症状が異なるため、「まだら認知症」とも呼ばれます。
感情のコントロールが難しくなる(感情失禁)こともあります。
レビー小体型認知症脳にレビー小体という特殊なたんぱく質がたまることが原因です。
リアルな幻視、錐体外路症状(手の震え、小刻み歩行)、症状が日によって変動する(良い時と悪い時の波がある)のが特徴です。
前頭側頭型認知症脳の前頭葉と側頭葉が萎縮することで起こります。
性格の変化(わがままになる、反社会的な行動をとる)、同じ行動を繰り返す(常同行動)、言葉の意味が分からなくなる、といった症状が目立ちます。

このほか、甲状腺機能低下症やビタミン欠乏症(慢性アルコール中毒によるものなど)、慢性硬膜下血腫など、原因を治療すれば改善する可能性のある認知症(Treatable Dementia)もあります。そのため、早期の正確な診断が非常に重要です。

MRI画像

「もしかして認知症かも?」と感じたら、まずは専門の医療機関(精神科、心療内科、神経内科、もの忘れ外来など)に相談しましょう。診断は、ご本人やご家族からのお話、検査などを通じて総合的に行われます。

  1. 問診:
    • ご本人・ご家族からのお話:
      いつから、どのような症状で困っているか、日常生活の様子、既往歴や服用中の薬など、詳しくお話を伺います。ご家族から見た「以前との違い」は非常に重要な情報です。
  2. 神経心理学検査:
    • 認知機能テスト:
      長谷川式認知症スケール(HDS-R)ミニメンタルステート検査(MMSE)など、質問に答えていただく簡単なテストで、記憶力や見当識などの認知機能の状態を客観的に評価します。
  3. 画像検査:
    • CT、MRI:
      脳の形を撮影し、脳の萎縮の程度や場所、脳梗塞や脳腫瘍の有無などを調べます。認知症の原因を特定するために不可欠な検査です。(※当院では実施できないため、必要に応じて連携医療機関にご紹介します)
  4. 血液検査:
    認知症と似た症状を引き起こす他の体の病気(甲状腺機能の異常、ビタミン不足など)がないかを調べます。
  5. 診断と説明:
    これらの結果を総合的に判断し、認知症かどうか、どのタイプの認知症の可能性が高いかを診断します。そして、ご本人とご家族に病状と今後の治療方針について丁寧に説明します。
MRI
採血

現在のところ、認知症を完全に治す薬はありませんが、病気の進行を遅らせたり、症状を和らげたりすることは可能です。治療の柱は「薬物療法」と「非薬物療法」の二つです。

薬物療法

お薬には、中核症状の進行を遅らせる「抗認知症薬」と、BPSDを和らげるお薬があります。

  1. 抗認知症薬:
    • コリンエステラーゼ阻害薬(ドネペジルなど):
      アルツハイマー型やレビー小体型認知症で使われます。脳内の神経伝達物質を増やし、情報伝達をスムーズにすることで、症状の進行を緩やかにします。
    • NMDA受容体拮抗薬(メマンチン):
      神経細胞を保護する作用があり、興奮や攻撃性を比較的和らげる効果も期待できます。
    • 抗アミロイド抗体薬(レカネマブなど):
      アルツハイマー型認知症の新しい治療薬です。脳内の原因物質(アミロイドβ)を取り除くことで、病気の進行そのものを抑える効果が期待されています。(※使用には厳しい条件があり、専門医療機関でのみ投与可能です)
  2. BPSDに対するお薬:
    不安や興奮が強い場合には抗精神病薬、うつ状態には抗うつ薬、不眠には睡眠薬などが使われます。ただし、高齢の患者さんには副作用(ふらつき、眠気など)が出やすいため、ごく少量から慎重に使用します。BPSDの治療は、まず非薬物療法を試すのが原則です。
薬の説明

 さらに詳しく知りたい方はこちらに進んでください 精神科の薬物療法について>>

非薬物療法(リハビリテーション)

お薬と同じくらい、あるいはそれ以上に重要なのが、薬を使わないアプローチです。ご本人の残っている能力を活かし、穏やかな生活を送れるように支援します。

  1. 認知リハビリテーション:
    計算ドリル、パズル、昔の歌を歌う、昔の写真をみて話す(回想法)など、楽しみながら脳を活性化させます。
  2. 運動療法:
    散歩や簡単な体操など、体を動かすことは脳の血流を良くし、気分転換にもなります。転倒予防にもつながります。
  3. 環境調整:
    ご本人が混乱しないように、家の中を整理整頓する、危険なものを片付ける、トイレの場所を分かりやすく表示するなど、安全で過ごしやすい環境を整えます。

認知症は進行性の病気ですが、適切な治療とケアを続けることで、その進行を緩やかにし、穏やかな生活を長く続けることが可能です。

  1. 進行を遅らせるために:
    処方されたお薬をきちんと続けること、デイサービスなどを利用して社会とのつながりを持ち続けること、生活習慣病(高血圧、糖尿病など)をきちんと管理することが大切です。
  2. 症状を安定させるために:
    ご本人が「安心できる」と感じられる環境が何より重要です。規則正しい生活リズムを保ち、役割(簡単な家事など)を持ってもらうことで、自信や意欲を引き出すことができます。
  3. ご家族の休息も大切:
    介護は長期戦です。ご家族が疲れ果ててしまうと、良いケアはできません。デイサービスやショートステイなどの介護サービスを積極的に利用し、ご自身の時間も大切にしてください。
光を求めて

BPSD(行動・心理症状)は、ご本人の苦しみや混乱の現れです。ご家族や周りの方の対応次第で、症状が大きく変わることも少なくありません。ここでは、具体的な場面ごとの対応のヒントと、その理由を詳しく解説します。

基本的な心構え:3つの「ない」

  1. 驚かせない:
    後ろから急に声をかけたり、大きな物音を立てたりしない。
  2. 急がせない:
    ご本人のペースに合わせ、ゆっくりと待つ。
  3. 自尊心を傷つけない:
    「どうして忘れるの?」と問い詰めたり、子ども扱いしたりしない。
肩に手を置く

場面別の具体的な対応法

ケース1:同じことを何度も聞く・言う
  • ありがちな良くない対応:
    • 「さっきも言ったでしょ!」とイライラして答える。
    • 「もう忘れたの?」と記憶力の低下を指摘する。
    • 無視をする。
    • 良くない理由:
      ご本人は、質問したこと自体を忘れています(短期記憶の障害)。不安だからこそ、確認したくて何度も聞いてしまうのです。否定されたり責められたりすると、不安や混乱が増し、さらに症状が悪化することがあります。
  • 望ましい対応:
    • 初めて聞かれたかのように、毎回丁寧に答える:
      「今日の夕食はカレーですよ」と、穏やかに、にこやかに答えます。ご本人は内容を忘れても、「優しく対応してもらえた」という安心感は心に残ります。
    • 視覚的に伝える工夫をする:
      聞かれる内容が予定などであれば、カレンダーやホワイトボードに大きく書いて、目につく場所に貼っておく。「あそこに書いてありますよ」と指し示すことで、ご本人も納得しやすくなります。
    • 話を変えて気をそらす:
      「そういえば、お庭の花がきれいですね。少し見に行きませんか?」など、ご本人が関心を持つような別の話題に切り替えるのも有効です。
ケース2:「財布を盗られた」と言う(物盗られ妄想)
  • ありがちな良くない対応:
    • 「誰も盗ってないよ!自分でどこかに置いたんでしょ!」と真っ向から否定する。
    • 「また始まった…」と呆れた態度をとる。
    • 犯人探しを論理的に説得しようとする。
    • 良くない理由:
      ご本人にとっては、それが揺るぎない事実です。物をしまった場所を忘れてしまったこと(記憶障害)が根本にありますが、それを認めたくない気持ちから、無意識に「誰かに盗られた」というストーリーを作り上げてしまいます。否定されることは、自分の世界を否定されることであり、強い不安や怒りを引き起こします。
  • 望ましい対応:
    • まずは気持ちに寄り添う(共感):
      「お財布がなくなってしまったんですね。それは大変!心配ですよね」と、ご本人の焦りや不安な気持ちをまず受け止めます。否定せず、かといって肯定(「〇〇さんが盗りましたね」と同調)もしないのがポイントです。
    • 一緒になって探す:
      「私も一緒に探しますね」と協力的な姿勢を見せます。探すという行為を通じて、ご本人の気持ちを落ち着かせることができます。探しているうちにご本人が別のことに関心を移したり、偶然見つかったりすることも多いです。
    • 環境を整える:
      いつも同じ場所に物を置くようにする、予備の財布を用意しておくなどの工夫で、混乱を未然に防ぐことができます。
ケース3:夕方になると「家に帰る」と言い出す(帰宅願望)
  • ありがちな良くない対応:
    • 「ここがあなたの家でしょ!」と力ずくで引き留める。
    • 「どこに帰るの!」と問い詰める。
    • 玄関に鍵をかけて閉じ込める。
    • 良くない理由:
      「家に帰りたい」という言葉は、言葉通りの意味だけではありません。多くの場合、その裏には「ここに居場所がない」「不安で落ち着かない」「何か役割を果たさなければ(夕食の準備など)」といった、漠然とした不安や焦りが隠されています。ご本人にとっての「帰る家」は、若い頃に慣れ親しんだ、安心できる場所のイメージなのです。
  • 望ましい対応:
    • 共感と傾聴:
      「お家に帰りたいんですね」とまずは気持ちを受け止め、「お家で何かすることがあるんですか?」と理由を優しく尋ねてみます。不安な気持ちを話すだけで落ち着くこともあります。
    • 気分転換を提案する:
      「もう暗くなってきたから、今日はここに泊まっていきませんか?」「お茶でも飲んで一休みしてから考えましょうか」など、一度気持ちを切り替える提案をします。
    • 安心できる時間や役割を作る:
      夕方の時間は、ご本人にとって不安になりやすい時間帯です。一緒に洗濯物をたたむ、食事の準備を手伝ってもらうなど、簡単な役割をお願いすることで、「自分はここにいていいんだ」という安心感につながります。
ケース4:入浴や着替えを嫌がる(介護への抵抗)
  • ありがちな良くない対応:
    • 「汚いから入りなさい!」と無理やり浴室に連れて行こうとする。
    • 理由も説明せず、いきなり服を脱がせようとする。
    • 良くない理由:
      認知症の進行により、入浴という行為の意味が理解できなくなっている(失行)、裸になるのが恥ずかしい、浴室の環境(寒さ、音)が不快、体調が悪いなど、様々な理由が考えられます。ご本人なりの「嫌な理由」があるのです。
  • 望ましい対応:
    • 理由を探る:
      「どうして入りたくないのかな?」とご本人の様子を観察し、理由を考えてみます。体調が悪そうなら無理はさせません。
    • 誘い方を工夫する:
      「お風呂に入りましょう」ではなく、「気持ちのいい温泉が沸きましたよ」「さっぱりしに行きませんか?」など、楽しいイメージの言葉で誘ってみます。
    • 環境を整える:
      脱衣所や浴室をあらかじめ暖めておく、好きな音楽をかけるなど、リラックスできる環境を作ります。
    • 手順を単純化する:
      一つ一つの動作を「まずはお袖を抜きますね」「次はこちらの足です」と具体的に、ゆっくり声をかけながら介助します。
    • 時間を変えてみる:
      ご本人の機嫌が良い時間帯や、日中の暖かい時間帯に試してみるのも良い方法です。

ご家族や介護者の方が穏やかに、尊厳をもって接することは、ご本人の心を安定させ、BPSDを軽減する最も効果的な「お薬」と言えるかもしれません。

アルツハイマー型認知症のイメージ

神楽坂メンタルクリニックでは、認知症の患者さんとそのご家族をサポートするために、以下のような医療を提供しています。

  1. 専門医による診断と治療方針の決定:
    認知症の臨床経験の豊富な院長が丁寧にお話を伺い、必要な検査を行った上で、的確な診断と個々の患者さんに合わせた治療計画を立てます。
  2. 薬物療法の調整:
    お薬の効果と副作用を丁寧に見極めながら、患者さんにとって最適な処方を検討します。BPSDに対しては、安易に薬に頼るのではなく、まずは環境調整や対応の工夫をご家族と一緒に考えます。
  3. ご家族への助言と指導(心理教育):
    認知症という病気の正しい知識、患者さんへの具体的な接し方、利用できる介護サービスの情報などを提供し、ご家族の負担や不安を軽減するお手伝いをします。
  4. 各種制度の利用支援:
    介護保険の主治医意見書や、成年後見制度の診断書など、必要な書類の作成にも対応いたします。

現在、心理士によるカウンセリングは準備中ですが、医師がご家族の精神的なサポートも含めて、親身に相談に応じています。一人で抱え込まず、どうぞお気軽にご相談ください。

希望の手

さらに詳しく知りたい方は進んでください。ただし専門医レベルの難しい内容を含みます。

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