>> 当日予約・24時間予約はこちら
初診案内 Web予約 お問い合わせ アクセス

PTSD

命の危険を感じる体験後に続く、心の傷の物語

怖い体験の後、その記憶が何度も蘇り、不安や緊張が続く病気です。眠れない、イライラするなどの症状があれば、一人で抱え込まずにご相談ください。

  • 記憶が突然よみがえる
  • 悪夢を繰り返し見る
  • 関連する場所や話題を避ける
  • 常に神経が張り詰めている
  • ささいなことで驚いてしまう
  • 感情が麻痺したように感じる
  • 自分や他人を過剰に責めてしまう
  • イライラして怒りっぽくなる

PTSD(心的外傷後ストレス障害)は、命の危険を感じるような、自分ではどうしようもない圧倒的な出来事(トラウマ)を体験した後に、こころと体にさまざまな不調が現れる病気です。心に深い「怪我」を負った状態にたとえられます。身体の怪我に手当てと時間が必要なように、心の怪我にも適切な手当てと時間が必要です。これは特別な人だけがなるものではなく、誰にでも起こりうる病気で、本人の「弱さ」や「気のもちよう」が原因ではありません。一人で抱え込まず、専門家の助けを求めることが大切です。

つらい記憶がふいによみがえる、関連する場所や話題を避けてしまう、常に気が張って眠れない――そんな状態が続いてつらいときは、ご相談ください。適切な治療によって、症状を和らげ穏やかな生活を取り戻していけます。

1. PTSD(心的外傷後ストレス障害)とは?

PTSD(Post-Traumatic Stress Disorder)は、強烈な恐怖や無力感を伴う出来事(トラウマ)を体験した後に、こころと体に不調が続く病気です。心に負った「怪我」が、何かの拍子にズキズキ痛むように、PTSDの方もふとした瞬間につらい記憶がよみがえって苦しみます。

この病気は特別な人だけがなるわけではなく、誰にでも起こりうる病気です。本人の「弱さ」や「気のもちよう」が原因ではありません。トラウマ体験によって脳のシステムが一時的にうまく働かなくなり、感情や記憶のコントロールが難しくなっている状態です。大切なのは、一人で抱え込まずに専門家の助けを求めることです。

トラウマのイメージ

2. 主な症状 ― 4つのタイプ

PTSDの症状は大きく4つのタイプに分けられます。これらが1か月以上続き、日常生活に支障が出ている場合に診断が考えられます。

① 侵入症状(再体験)

トラウマ体験が、自分の意思と関係なく繰り返し思い出される症状です。「心の傷口が開いてしまう」ような状態です。
フラッシュバック:今その出来事が再び起きているかのように、映像・音・匂い・体の感覚を伴って生々しくよみがえる。
悪夢:トラウマに関連した恐ろしい夢を繰り返し見る。
苦痛な記憶:思い出すと強い精神的・身体的苦痛(動悸・冷や汗・震え)を感じる。

街中での精神症状イメージ

② 回避症状

つらい記憶を思い出させる人・場所・物・会話などを、無意識に、あるいは意図的に避けるようになります。「痛む傷口に触れないようにかばう」行動に似ています。トラウマについて考えること自体を避ける(内的回避)、事故現場に近づけない・関連するニュースを見られない(外的回避)などがあります。

③ 認知と気分の陰性変化

物事の考え方や感じ方が否定的に変わる症状です。「世界を見る色眼鏡が灰色になった」ような状態です。トラウマの重要な部分を思い出せない、「自分はダメだ」「誰も信用できない」といった過剰に否定的な考え、喜びや愛情を感じにくくなる感情の麻痺、周囲からの孤立感などが現れます。

④ 覚醒度と反応性の著しい変化(過覚醒)

常に神経が張り詰め、心も体もリラックスできない状態です。「いつ敵が襲ってくるかわからない」と警戒し続けるような状態で、過剰な警戒心、ささいな物音への強い驚き(驚愕反応)、集中困難、寝つきの悪さ・中途覚醒などの睡眠障害、ささいなことでのイライラや怒りの爆発などが見られます。

つらさを抱える人のイメージ

3. 原因やきっかけは?

直接的な原因は、強烈な恐怖や無力感を伴う「トラウマ体験」です。代表的なものに次のような出来事があります。

  • 自然災害:地震、津波、台風、洪水など
  • 事故:交通事故、火災、労災事故など
  • 犯罪被害:暴力、強盗、性的暴行、監禁など
  • 虐待:身体的・精神的・性的虐待、ネグレクト
  • 戦争・紛争:兵士としての体験、紛争地域での生活
  • その他:大切な人の突然の死、重い病気の診断など

これらを直接体験するだけでなく、他人が体験するのを目撃したり、家族や親しい人の体験を聞いたりすることでも発症しうります。トラウマを体験した人が全員PTSDになるわけではありませんが、それは本人の強さ・弱さの問題ではなく、体験の深刻さ・もともとの気質・周囲のサポートの有無など、さまざまな要因が複雑に絡み合って発症すると考えられています。

4. 診断の流れ

「もしかしてPTSDかも」と感じたら、まず精神科・心療内科に相談することが第一歩です。診断は主に医師による丁寧な問診で行います。

  • どのような出来事があったか:無理に話す必要はありません。話せる範囲できっかけとなった出来事を伺います。
  • 現在の症状:いつから、どのような症状で困っているかを具体的に伺います。
  • 生活への影響:仕事・学業・家庭生活にどんな支障が出ているか。
  • これまでの経過:症状が現れてからの経過や、他の病気の経験など。

必要に応じて質問紙形式の心理検査(チェックリスト)で症状の重さを客観的に評価します。問診と検査を総合し、国際的な診断基準(DSM-5-TRなど)に基づいて診断します。うつ病や不安症など他の病気が隠れていないかも含めて慎重に判断します。診断は患者さんを型にはめるためではなく、つらさの正体を明らかにし、最適な治療法を見つけるための大切なプロセスです。

5. 主な治療法(心理療法・薬物療法)

PTSDの治療には「心理療法」と「薬物療法」の2つの柱があります。両方を組み合わせて行うことで効果が期待できます。治療の目標は、症状を和らげ、穏やかな日常生活を取り戻すことです。

① 心理療法(トラウマ焦点化心理療法)

専門家との対話を通じて、トラウマ記憶との向き合い方を学び、考え方や感情のコントロール方法を身につけます。PTSD治療の根幹で、特にトラウマ記憶に焦点を当てた心理療法が高い効果を示すことがわかっています。

  • 持続エクスポージャー(PE)療法:安全が保証された環境で、専門家のサポートのもと、避けてきたトラウマの記憶や状況にあえて少しずつ向き合います。繰り返すことで「思い出しても危険ではない」と脳が学習し、恐怖や不安が和らいでいきます。
  • 認知処理療法(CPT):トラウマ体験で生じた「自分は汚れている」「世の中は危険だ」といった極端で偏った考え方(認知のゆがみ)に焦点を当て、より現実的でバランスの取れた考え方ができるようにサポートします。
  • EMDR(眼球運動による脱感作と再処理法):専門家が左右に動かす指を眼で追いながらトラウマ記憶を思い浮かべる特徴的な治療法です。脳の処理を促し、つらい記憶を「過去の出来事」として整理する手助けをすると考えられています。
カウンセリング

② 薬物療法

心理療法と並行して、お薬の力を借りることも有効です。お薬は、過敏になった神経を落ち着かせ、不安や落ち込みを和らげることで、安心して心理療法に取り組める土台を作る「お守り」のような役割です。

  • SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬):抗うつ薬の一種で、PTSD治療の第一選択薬です。国内ではセルトラリン・パロキセチンがPTSDに保険適用されています。不安・気分の落ち込み・衝動性などの改善が期待できます。効果が出るまで数週間かかることがありますが、継続して服用することが大切です。
  • その他の薬:悪夢がひどい場合や気分の波が激しい場合など、個々の症状に合わせてお薬が追加されることもあります。

注意が必要なお薬:ベンゾジアゼピン系の抗不安薬は一時的に不安を和らげますが、依存のリスクがあり、PTSDの中核症状の改善や心理療法の効果を妨げる可能性があるため、長期使用は推奨されていません。

さらに詳しく知りたい方はこちら 精神科の薬物療法について >>

薬の説明

6. 回復や再発予防について

PTSDからの回復は一直線の道のりではなく、良くなったり少し後退したりを繰り返しながら、ゆっくり進んでいきます。大切なのは焦らず、ご自身のペースで治療を続けることです。

回復のために大切なこと

  • 安心できる環境:まずはこころと体を休ませ、安全だと感じられる環境を整える。
  • 治療への参加:医師やカウンセラーを信頼し、主体的に治療に参加する。わからないことは遠慮なく質問を。
  • 生活リズムを整える:決まった時間に起きて食事をとり、適度な運動を心がける。
  • 自分を責めない:症状は病気のせいで、あなたのせいではありません。

症状が落ち着いた後も、ストレスなどがきっかけで再発することがあります。自分なりのリラックス方法(音楽・散歩・深呼吸など)を持つ、困ったときに話せる相手や場所(家族・友人・自助グループ)を確保する、「最近眠れない」「イライラが増えた」などの不調のサインに早めに気づく、お薬は自己判断でやめない――こうした心がけが再発予防につながります。回復の道のりは一人ひとり違います。ご自身のペースで一歩ずつ進んでいきましょう。

希望のひかり

7. 患者さんへの接し方(ご家族・職場の方へ)

身近な方がPTSDと診断されたとき、どう接すればよいか戸惑うのは当然です。支える上で大切な3つの心構えと、具体的な対応をご紹介します。

基本となる3つの心構え

  • 安全な「基地」になる:PTSDの方は世界が危険な場所だと感じ、常に緊張状態にあります。「ここは安全だ」「この人の前では安心できる」と感じられる心の安全基地になることが、何よりの回復の助けになります。
  • 病気への理解を深める:イライラや引きこもり、突然の涙は性格が変わったのではなく病気の症状です。そう理解するだけで、支える側も冷静に対応できます。
  • 無理強いせず、本人のペースを尊重する:トラウマはコントロールを失った経験です。回復には「自分で決める・コントロールできる」感覚を取り戻すことが重要で、良かれと思った無理強いは逆効果になりえます。「こうすべき」ではなく「こうしてみるのはどう?」という姿勢を。
肩に手を置く

具体的な対応例(ご家族の場合)

場面 望ましい対応 避けたい対応
トラウマを話そうとしている時静かに遮らず耳を傾ける。「話してくれてありがとう」「それはつらかったね」と気持ちに寄り添う。「いつまで引きずっているの」「私の時なんて…」と話を遮ったり比較・矮小化する。
引きこもっている時「話したくなったらいつでも聞くよ」と声をかけ、そっとしておく。「メソメソするな」「無理にでも外に出なさい」と無理やり連れ出す。
イライラや怒りをぶつけてきた時「症状のせい」と理解し冷静に受け止める。「少し一人になろうか」と物理的に距離をとる。「何なのその態度は!」と感情的に言い返す。
フラッシュバックを起こしている時「大丈夫、ここは安全だよ」「今、私が見える?」と優しく声をかけ、五感に働きかけて意識を「今ここ」に戻す手伝いをする。大声を出したり、体を強く揺さぶったりする。

支えるあなた自身のために(セルフケア):ご家族も支える中で大きなストレス(二次受傷)を感じます。一人で抱え込まず家族会や専門家に相談する、意識的に自分の時間を持つ、完璧を目指さない――これらが結果的に長く支える力になります。

具体的な対応例(職場の同僚・上司の場合)

場面 望ましい対応 避けるべき対応
病気を打ち明けられた時「話してくれてありがとう。プライバシーは守るよ」「無理のない範囲で必要な配慮を教えて」と伝える。過剰に驚く、根掘り葉掘り聞く、他の同僚に話す。
集中できていない時「少し疲れてる?休憩したら?」「手伝えることある?」とさりげなく声をかける。「集中しろ!」「またミスしてる」と強く叱責する。
特定の音・状況に過敏に反応する時(上司として)刺激の少ない席への移動や業務調整など、合理的な配慮を検討する。「気にしすぎ」「我慢しろ」と個人の問題で片付ける。
体調不良で休む連絡があった時「わかりました、お大事に」とシンプルに受け止める。「またか」と嫌味を言ったり、理由を詮索する。

特別扱いしすぎる必要はありません。一人の同僚として尊重し、症状に少しの理解と配慮を示すことが大きな支えになります。

手を差し伸べる

8. 当院でできること

神楽坂メンタルクリニックでは、PTSDでお悩みの患者さんお一人お一人に寄り添い、専門的な立場から回復のお手伝いをします。

  • 専門医による丁寧な診断:お話を丁寧に伺うことから始め、国際的な診断基準に基づき、他の疾患との鑑別も含めて慎重に診断します。
  • エビデンスに基づいた薬物療法:第一選択薬であるSSRIを中心に、症状や状態に合わせて提案・調整します。効果や副作用についてわかりやすくご説明します。
  • 医師による助言と指導:治療上の不安や日常生活で気をつけることについて、医師が親身に相談に応じます。ご家族からのご相談にも対応します。
  • 安心できる治療環境:プライバシーに配慮し、温かく落ち着いた環境づくりを心がけています。

臨床心理士による専門的なカウンセリングや心理療法は現在準備中です。心理的サポートが治療に不可欠であることは十分認識しており、当面は医師による精神療法的アプローチや生活指導を通じて心のケアに努めます。トラウマ焦点化心理療法を要する場合は、必要に応じて連携医療機関をご紹介します。

つらい記憶に一人で苦しんでいませんか。その苦しみは、決してあなたのせいではありません。穏やかな日常を取り戻すための一歩を、当院と一緒に踏み出してみませんか。どうぞお気軽にご相談ください。

希望の手

9. よくあるご質問(FAQ)

Q. つらい出来事を経験した人は、みんなPTSDになるのですか?

いいえ。トラウマを体験しても多くの方は時間とともに自然に回復します。発症するかどうかは、体験の深刻さ・もともとの気質・周囲のサポートなど多くの要因が関係し、本人の強さ・弱さの問題ではありません。

Q. 何年も前の出来事ですが、今さらPTSDということはありますか?

あります。トラウマから半年以上、ときには何年も経ってから症状が現れることがあり、「遅発性(遅発顕在型)」と呼ばれます。時間が経っていても治療の対象になりますので、ご相談ください。

Q. つらい記憶を話すのがこわいです。治療では必ず話さないといけませんか?

初めから無理に話す必要はありません。まずは安心できる関係づくりから始め、ご本人のペースを尊重して進めます。トラウマ記憶に向き合う治療も、安全が保証された環境で少しずつ行い、いつでも調整できます。

Q. 薬はPTSDを「治す」のですか?依存しませんか?

第一選択のSSRIは依存性がなく、過敏になった神経を落ち着かせて心理療法に取り組む土台を作ります。一方、ベンゾジアゼピン系の抗不安薬は依存のリスクがあり、PTSDでは長期使用は推奨されません。薬の調整は必ず医師と相談しながら行います。

Q. 家族がフラッシュバックを起こしたとき、どう対応すればよいですか?

ご本人は過去の恐怖を再体験しています。まず「大丈夫、ここは安全だよ」と落ち着いて声をかけ、安心させることが最優先です。冷たいタオルや温かい飲み物など五感に働きかけ、意識を「今、ここ」に戻す手助けをしてください。大声を出したり体を強く揺さぶるのは避けましょう。

ご予約はこちら(オンライン予約)

※このページの内容は、PTSDについて理解を深めていただくための一般的な情報です。診断・治療は個々の状態によって異なり、効果や経過には個人差があります。気になる症状があるときは医療機関にご相談ください。

※つらい気持ちが強いとき、今すぐ誰かに話したいときは、一人で抱え込まず下記にもご相談いただけます。
こころの健康相談統一ダイヤル:0570-064-556(お住まいの地域の公的な相談窓口につながります)


さらに詳しく知りたい方は、次のページにお進みください。

※ここから先は、専門医レベルの詳しい内容(診断基準・複雑性PTSD・病態・治療・最新研究動向など)を含みます。

1

2
ページ上部へ戻る
03-5579-8290

電話対応 9:00~18:00
FAX番号 03-5579-8322(24時間)
※11月1日より電話対応開始