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ストレスコーピングとは?日常でできる対処の具体例

「仕事のことを考えると胸がざわざわする」「些細なことでイライラして、気持ちが切り替えられない」——そんなとき、自分の心と体をやわらげるための工夫をストレスコーピング(対処)と呼びます。コーピングは特別な技術ではなく、誰もがふだん自然に行っているもの。少し意識して「自分に効く方法」を増やしておくと、つらいときに自分を助けやすくなります。この記事では、日常で実践できるコーピングの具体例と、当院が無料で公開しているセルフケアアプリ「わたしの対処カード」の使い方をご紹介します。

1. ストレスコーピングとは?

ストレスコーピングとは、ストレスを感じたときに、それをやわらげたり、うまくつき合ったりするための意識的な工夫や行動のことです。「コーピング(coping)」は英語で「対処する」という意味です。

私たちは、ストレスを感じる出来事(ストレッサー)に出会うと、それを「どのくらい大変か」「自分は対処できそうか」と頭の中で評価し、その上で何らかの対処をしています。この一連の流れは、心理学者ラザルス(Lazarus)とフォルクマン(Folkman)が示した考え方として知られています。大切なのは、うまくいく対処の「引き出し」をたくさん持っておくこと。引き出しが多いほど、状況に合わせて柔軟に対応でき、ストレスに押しつぶされにくくなります。

2. コーピングの2つのタイプ

コーピングは大きく、原因そのものに働きかける「問題焦点型」と、生じた気持ちを整える「情動焦点型」の2つに分けられます。どちらが優れているということはなく、状況に応じた使い分けが鍵になります。

タイプ どんな対処か・具体例
問題焦点型 ストレスの原因そのものを減らす・変える対処。
例:やることを書き出して整理する/人に相談する/苦手な状況から距離をとる/断る
情動焦点型 生じた気持ちや体の緊張をやわらげる対処。
例:深呼吸する/好きな音楽を聴く/散歩する/話を聞いてもらう
使い分けのヒント: 自分で変えられそうなことには「問題焦点型」を、他人・過去・天気のように自分ではどうにもできないことには「情動焦点型」を中心に。コントロールできないことに問題焦点型を使い続けると、かえって消耗しやすくなります。

3. 日常でできるコーピングの具体例

大がかりなことは必要ありません。「深呼吸を1回する」のような小さな対処も、立派な一枚のカードです。下の表を参考に、自分が「これならできそう」と感じるものを探してみてください。

カテゴリー 具体例
体をゆるめる・動かす 深呼吸(4秒吸って6〜8秒かけて長く吐く)/肩を上げてストンと落とす/散歩・軽いストレッチ/ゆっくり入浴
気持ちを外に出す 今の気持ちを紙に書き出す/信頼できる人に話す/がまんせず泣く
気分を切り替える 好きな音楽を聴く/温かい飲み物を味わう/好きな香り/植物・ペット・自然に触れる
考え方をやわらげる 「これは一時的」と思い出す/「100点でなくていい」と肩の力を抜く/友だちを励ますように自分にやさしい言葉を
問題に取り組む やることを書き出す/大きな課題を小さく分ける/調べる・人に聞く/無理なときは断る・頼る
五感でひと休み おいしいものを味わう/肌ざわりのよいものでくつろぐ/目を閉じて静かな時間をつくる

4. 「コーピングのレパートリー」を増やそう

効きそうな対処を、前もってできるだけたくさん書き出しておく——これがコーピングを役立てる最大のコツです。

心理士の伊藤絵美氏は、自分に合った対処を数多くリストアップして「手持ちのレパートリー」として備えておくことを提案しています。理由はシンプルで、強いストレスがかかってから新しい方法を考えるのは、とても難しいからです。元気なうちに引き出しを用意しておけば、つらいときは「考える」のではなく「選ぶ」だけで済みます。

レパートリーづくりの4つのポイント

  1. つらくなる前に書き出す……元気なときほど、たくさん思いつきます。
  2. 大きい・小さいは気にしない……「旅行に行く」も「深呼吸を1回する」も、どちらも1枚です。
  3. 数が多いほど心強い……目安は20〜30個以上。状況に合わせて選べるようになります。
  4. 使って入れ替える……効いたものは残し、合わなければ別の対処へ。少しずつ自分仕様に。

5. アプリ「わたしの対処カード」の使い方

当院では、自分のコーピングを登録し、つらいときに一枚ランダムで引けるセルフケアアプリ「わたしの対処カード」を無料で公開しています。インストールやアカウント登録は不要で、スマートフォン・タブレット・パソコンのブラウザでそのまま使えます。

使い方の流れ

  1. カードを登録する……効きそうな対処を入力します。「例から選んで追加」を使えば、ワンタップで増やせます。
  2. つらくなったら一枚引く……「カードを引く」を押すと、登録した中から一枚が表示されます。あとは、それを試してみるだけです。
  3. 気分に合わせて絞る……「今は体を動かしたい」など、カテゴリーを選んで引くこともできます。
  4. 少しずつ育てる……合うカードは残し、しっくりこなければ入れ替えて、自分だけの引き出しにしていきましょう。
登録した内容はお使いの端末の中だけに保存され、当院のサーバーには送信されません。安心してご利用ください。スマホでは「ホーム画面に追加」すると、アプリのアイコンからすぐ開けます。

(別タブで開きます)

6. 認知行動療法(CBT)とコーピングの関係

コーピングは、認知行動療法(CBT)という心理療法の中核的な考え方とも深くつながっています。CBTは、出来事に対する「考え方(認知)」と「行動」の両面に働きかけ、ストレスとの付き合い方を整えていく方法です。

たとえば「考え方をやわらげる」コーピングは、CBTの認知再構成(考え方のバランスを取り直す技法)と同じ方向を向いています。その代表的な練習が「コラム法(思考記録表)」です。日々のコーピングをさらに体系的に学びたい方は、下記の記事もあわせてご覧ください。

7. 気をつけたい対処(逆効果になりやすいもの)

その場は楽になっても、長い目で見ると苦しさを強めてしまう対処もあります。

お酒を飲みすぎる、やけ食いをする、ずっと家にこもる——こうした方法は、一時的に気持ちを鎮めても、あとでかえってつらくなりやすいものです。大切なのは「だめだ」と自分を責めることではなく、「同じ気持ちを、別の対処でも満たせないかな?」と置きかえを考えてみることです。なお、つらさをやわらげるために飲酒量が増えている場合などは、早めに医師にご相談ください。

8. こんなときは、ご相談ください

コーピングはとても役に立ちますが、それだけでは追いつかないこともあります。次のようなサインが続くときは、ひとりで抱え込まず、専門家にご相談ください。

眠れない日が続く/食欲がない/何をしても楽しめない/気分の落ち込みや不安が2週間以上つづく/日常生活(仕事・家事・学業)に支障が出ている

「相談するほどではないかもしれない」と感じるくらいのタイミングが、ちょうどよい受診の目安です。早めにご相談いただくほど、回復もスムーズに進みやすくなります(経過には個人差があります)。

よくある質問(FAQ)

Q. コーピングはいくつくらい用意すればよいですか?

A. 決まった数はありませんが、20〜30個以上あると、状況に合わせて選びやすくなります。まずは思いつくものから書き出し、少しずつ増やしていきましょう。

Q. 気晴らし(情動焦点型)ばかりでは「逃げ」になりませんか?

A. いいえ。気晴らしは心を休ませる立派な対処です。自分で変えられない状況では、むしろ情動焦点型が役立ちます。変えられる問題には問題焦点型を、と使い分けるのがコツです。

Q. アプリの利用に料金や登録は必要ですか?

A. 無料で、アカウント登録も不要です。登録したカードはお使いの端末内にのみ保存され、当院のサーバーには送信されません。

Q. セルフケアだけで十分でしょうか?

A. 軽い不調の予防や日々の安定には役立ちますが、つらさが2週間以上続く・生活に支障が出ている場合は、医療機関へのご相談をおすすめします。効果や経過には個人差があります。

こころの不調が気になる方は、お気軽にご相談ください

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お電話:03-5579-8290(電話対応 10:00〜18:30/13:00〜14:30は休憩)

※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、診断・治療に代わるものではありません。症状や対処の効果には個人差があります。気になる症状がある場合は、医療機関にご相談ください。

【監修・執筆】永井常高(神楽坂メンタルクリニック院長・精神保健指定医・精神科専門医/指導医)

永井 常高

永井 常高

熊本大学卒 慶應義塾大学医学部精神神経科教室 精神保健指定医(第21030号) 精神科専門医・指導医

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