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認知行動療法とは?コラム法・技法・受け方を精神科医が解説

認知行動療法(にんちこうどうりょうほう/CBT)は、つらい気持ちのもとになっている考え方(認知)のクセ行動のパターンに働きかけ、悪循環をゆるめていく、科学的根拠の積み重ねがある心理療法です。うつ病・不安症・不眠症など幅広い不調に役立つことが示されており、薬物療法と組み合わせて行われることもあります。この記事では、代表的な技法を具体例とともに、特にコラム法を中心にくわしく解説し、ご自宅で取り組めるワークシートもご用意しました。

1認知行動療法(CBT)とは

認知行動療法とは、出来事そのものではなく、その出来事をどう受け取り(認知)、どう行動するかが、気分や体の反応を大きく左右するという考え方にもとづく心理療法です。考え方や行動を少しずつ調整することで、つらい気持ちを和らげ、再発を防ぐことをめざします。

同じ出来事でも、考え方で気持ちは変わる

たとえば、夜道で遠くに灯りのついた家が見えたとき、「道を聞ける」と考えれば安心しますが、「人がいる、こわい」と考えれば不安になります。同じ状況でも、頭に浮かぶ考え方によって、わいてくる感情はまったく違ってきます〈このとき自動的に浮かぶ考えを「自動思考」と呼びます〉。強いストレスがかかると、この自動思考が悲観的な方向にかたより、気分の落ち込みや不安、それを避けようとする行動が、たがいに強め合う悪循環が生まれます。

認知行動療法は、この悪循環の「どこか一か所」にやさしく働きかけ、流れを変えていきます。考えを無理にポジティブにするものではなく、現実に即した、しなやかでバランスのとれた見方を一緒に探していく点が特徴です。

CBTの3つの特徴

構造化されている 毎回のテーマや進め方の枠組みがある程度決まっており、目標に向かって段階的に進みます。
協働でおこなう 治療者が答えを与えるのではなく、本人と治療者が「共同研究者」のように一緒に考え、検証します。
日常で練習する 面接で学んだことを日常で試すホームワーク(宿題)を重視します。技術として身につくため、再発予防にもつながるとされています。

2認知行動療法の主な技法(具体例つき)

認知行動療法には、目的に応じたさまざまな技法があります。気分や状況に合わせて、これらを組み合わせて用いるのが一般的です。代表的な技法を、具体例とともに見ていきましょう。

① 心理教育

はじめに、病気や症状のしくみ、認知と気分の関係をわかりやすく共有します。「不安は本来、危険を知らせる自然な反応であり、異常でも有害でもない」と理解する〈ノーマライゼーション〉だけでも、過度の恐れがやわらぐことがあります。

② 行動活性化(活動記録表)

気分が落ち込むと活動が減り、活動が減るとさらに気分が落ち込む——この悪循環を、行動の側から断つ方法です。1日の活動と、その時に感じた達成感楽しさを記録し、気分が上向く活動を少しずつ増やしていきます。

具体例:「何もする気が起きない」という方が記録をつけると、「朝の散歩」のあとだけ気分の数値が高いことに気づきました。そこで散歩を生活に組み込むことから始め、活動の幅を広げていきました。

③ 認知再構成法(コラム法)

頭に自動的に浮かぶ考え(自動思考)を紙に書き出し、その根拠反証を点検して、より現実的でバランスのとれた考えを見つける方法です。CBTの中心的な技法のひとつで、「コラム法(思考記録表)」として知られています。重要なため、次のセクションでくわしく解説します。

④ 問題解決法

漠然とした悩みを「解ける形」に整理し、思いつく解決案を数多く出して、ひとつ選んで試す——という手順を踏む方法です。「考えても堂々めぐり」になりがちな状況を、具体的な行動へと進めていきます。

⑤ エクスポージャー(曝露療法)・曝露反応妨害法

不安なために避けている状況に、安全を確保しながら段階的に慣れていく方法です。不安症やパニック症、社交不安症で用いられます。強迫症では、不安を打ち消すための行為(確認・手洗いなど)をあえて控える「曝露反応妨害法」が中心になります。

具体例:人前で話すのが怖い方が、いきなり大勢の前ではなく、「親しい1人に話す→少人数の会議で発言する」のように、不安の小さい場面から段階的に取り組みます。

⑥ リラクセーション法・⑦ アサーション・⑧ 行動実験

リラクセーション法は、呼吸法や筋弛緩法で心身の緊張をゆるめます。アサーションは、相手を尊重しながら自分の気持ちも適切に伝える伝え方の練習です。行動実験は、「こう考えているが本当だろうか」を、実際に行動して確かめる方法で、コラム法と組み合わせると効果的とされています。

技法 主なねらい
心理教育しくみを理解し、過度の不安をやわらげる
行動活性化活動を増やし、気分の落ち込みの悪循環を断つ
認知再構成法(コラム法)考えのクセに気づき、バランスのよい見方を探す
問題解決法悩みを整理し、具体的な行動につなげる
エクスポージャー/曝露反応妨害法避けている不安・強迫に段階的に慣れる
リラクセーション/アサーション緊張をゆるめ、対人ストレスに対処する

3コラム法をくわしく

コラム法(思考記録表)とは、つらくなった出来事と、そのとき頭に浮かんだ考えを紙の欄(コラム)に書き出し、事実にもとづいて検討することで、考え方をしなやかにしていく方法です。書くことで考えを「外」に出して眺められるため、頭の中だけでぐるぐる考えるより整理しやすくなります。

まずは「3つのコラム」から

はじめての方は、シンプルな3つの欄から始めると取り組みやすいです。

① 状況いつ・どこで・誰と・何があったか
② 気分そのときの気持ちと、強さ(0〜100%)
③ 自動思考そのとき頭に浮かんだ考え・イメージ

これに慣れたら、考えを検討する欄を加えた「7つのコラム」に進みます。

7つのコラム(思考記録表)の書き方

7つのコラムは、厚生労働省の治療者用マニュアルでも用いられている標準的な枠組みです。次の順に書き進めます。

コラム書くこと
① 状況いつ・どこで・誰と・何が起きたか(事実だけ)
② 気分・感情(%)不安・落ち込みなどと、その強さ
③ 自動思考頭に浮かんだ考え。いちばん強いものに印をつける
④ 根拠その考えを裏づける事実
⑤ 反証その考えと合わない事実・別の見方
⑥ 適応的思考④⑤をふまえた、現実的でバランスのよい考え
⑦ 今の気分(%)②を書き直したあとの気持ちの強さ

記入例(具体例)

「上司に送ったメールの返信が2日来ない」という場面を例に、実際に書いてみましょう。

① 状況上司に送ったメールの返信が、2日たっても来ない
② 気分(%)不安 80%/落ち込み 60%
③ 自動思考「仕事ぶりに失望されたに違いない」「見限られるかもしれない」
④ 根拠いつもはもっと早く返信が来る
⑤ 反証上司は今週出張中と聞いた/以前も遅れたが単に多忙だった/問題があれば直接呼ばれるはず
⑥ 適応的思考返信がないのは私への評価とは限らない。出張や多忙が理由かもしれない。気になるなら確認の連絡をすればよい
⑦ 今の気分(%)不安 40%/落ち込み 25%

このように、考えを「正しい・間違い」で裁くのではなく、事実を集めてもう一つの見方を加えると、気持ちの強さが和らぐことがあります。

気づきのヒント:考え方のクセ(認知の偏り)

自動思考には、ストレス時に出やすい「考え方のクセ」がいくつかあります。自分のクセを知っておくと、③や⑤の欄を書きやすくなります。

考え方のクセ
白黒思考(全か無か)「完璧でなければ失敗だ」
過度の一般化「一度断られた=いつも嫌われる」
結論の飛躍(先読み・読心)「どうせ失敗する」「きっと嫌われている」
べき思考「〜すべき」「〜でなければならない」
感情的決めつけ「不安だから、きっと危険だ」
自己関連づけ(個人化)「うまくいかないのは全部自分のせい」

うまく取り組むためのコツ

出来事は具体的に「最近つらい」ではなく、ある一場面に絞ると書きやすくなります。
無理に明るくしない目的は「現実的でバランスのよい考え」を探すことで、ポジティブを強制することではありません。
完璧をめざさないうまく書けなくて大丈夫です。書きづらいところは、診察で一緒に整理できます。

※コラム法は気持ちを整える補助になりますが、つらさが強いときや一人で抱えきれないと感じるときは、無理をせず専門家にご相談ください。効果には個人差があります。

4睡眠のための認知行動療法(CBT-I)

不眠症に対する認知行動療法(CBT-I)は、睡眠を妨げている習慣や、眠りへの過度な不安・思い込みに働きかけ、薬に頼りすぎずに眠りを整えていく方法です。欧米の診療ガイドラインでは、慢性的な不眠症治療の最初の選択肢と位置づけられています。

【2026年6月〜】CBT-Iが公的医療保険の対象に
厚生労働省は2026年6月の診療報酬改定で、不眠症への認知行動療法に公的医療保険を適用しました。2種類以上の睡眠薬を使っても効果が十分でない場合や、うつ病・不安症をあわせもつ方などが対象とされています。

CBT-Iの主な構成要素

要素内容
睡眠衛生指導カフェイン・光・運動・就寝環境など、眠りに関わる生活習慣を整える
刺激制御法眠くなってから床に入る/床は「眠る場所」とだけ結びつける/眠れないときは一度床を離れる
睡眠制限法床の上で過ごす時間を実際の睡眠時間に近づけ、眠りの「効率」を高める(必ず専門家の指導のもとで)
認知へのアプローチ「眠れないと明日が台無しだ」といった過度の心配をやわらげる
リラクセーション法呼吸法などで就寝前の心身の緊張をゆるめる

CBT-Iでは、まず睡眠日誌で眠りの状態を「見える化」することから始めます。記録をもとに、その方に合った作戦を立てていきます。睡眠日誌はこのページの後半でダウンロードできます。

※睡眠制限法など一部の技法は、日中の強い眠気を一時的に増やすことがあり、運転業務のある方などでは注意が必要です。自己流で行わず、専門家と相談しながら進めてください。当院では睡眠に関するご相談に応じる睡眠外来も設けています。

5認知行動療法の有効性(エビデンス)

認知行動療法は、うつ病・不安症をはじめ多くの精神疾患に対して有効であることが、国内外の研究で示されています。特にうつ病では、症状の改善だけでなく再発予防の効果も報告されており、診療ガイドラインでも推奨されています。

対象位置づけ(概要)
うつ病有効性のエビデンスが多く、再発予防効果も報告。保険診療の対象
不安症・パニック症・社交不安症有効性が示され、ガイドラインでも推奨。保険診療の対象
強迫症・PTSD曝露を用いた技法が中心。いずれも保険診療の対象
神経性過食症専用のプログラム(CBT-E)が保険診療の対象
不眠症欧米ガイドラインで第一選択。2026年6月より保険診療の対象

近年は、インターネットを用いた認知行動療法(iCBT)でも、うつ症状の改善に効果があることがメタ解析(複数の研究をまとめて分析する方法)で示されています。また、国立精神・神経医療研究センターの研究では、うつ病や不安症をあわせもつ方に対し、診断を越えて使える統一プロトコル(UP)を通常治療に加えることで、より大きな改善がみられたと報告されています。

※エビデンスは「平均してこうした効果が期待される」という傾向を示すもので、効果のあらわれ方には個人差があります。症状や重症度によっては、薬物療法など他の治療と組み合わせることが望ましい場合もあります。

6認知行動療法はどこで受けられる?探し方

認知行動療法は、保険診療で受けられる場合と、自費のカウンセリングなどで受ける場合があります。受けられる場所や条件を知っておくと、探しやすくなります。

保険診療で受けられる主な条件

医療機関での認知行動療法(「認知療法・認知行動療法」)は、対象となる病気が定められています。対象は、うつ病などの気分障害、強迫症、社交不安症、パニック症、PTSD(心的外傷後ストレス症)、神経性過食症などです。この療法に関する研修を受けるなど習熟した医師が、1回30分を超えて、所定のマニュアルに沿って行った場合に、一連の治療につき16回まで算定できる仕組みです。

不眠症のCBT-Iは、前述のとおり2026年6月から新たに保険適用となりました。また、公認心理師が行う認知行動療法も、2026年6月の改定で評価されるようになっています。

探し方の手順

  1. まず主治医に相談する。通院中の方は、自分の状態にCBTが向いているか、どこで受けられるかを相談するのが近道です。
  2. 医療機関のホームページを確認する。「認知行動療法」「研修修了」などの記載や、対応している疾患を確認します。
  3. 公的な情報源をあたる。厚生労働省の認知行動療法研修事業や、関連学会の情報が参考になります。
  4. 自費プログラムは内容と費用をよく確認する。料金や回数、担当者の資格、エビデンスの裏づけを確認し、不安があれば主治医に相談しましょう。

※医療機関によって、対応している疾患や提供形態(個人・集団・オンラインなど)は異なります。受診前にご確認ください。

7精神科外来と併用する利点と注意点

認知行動療法は、精神科・心療内科の外来診療と組み合わせて行うことで、より安全で効果的になることがあります。一方で、知っておきたい注意点もあります。

併用の利点

診断にもとづいて進められる医師が状態を評価したうえで、その方に合った技法を選べます。
薬物療法と組み合わせられる症状が強い時期は薬で土台を整え、CBTで考え方・行動に取り組む、といった役割分担ができます。
安全に見守られる体調の変化や副作用を継続的に確認しながら進められます。
再発予防につながる学んだ対処法が、調子を崩しそうなときの「お守り」になります。

注意点

時間と回数が必要体系的なCBTは1回30分以上・複数回の面接を要します。通常の保険外来の短い診察時間だけでは、フルプログラムを行うのは難しいのが実情です。
ホームワークの継続効果には日常での練習が関わります。負担が大きいときは、量を調整しながら無理なく続けることが大切です。
向き・不向きがある症状や時期によっては、まず薬物療法や休養を優先したほうがよい場合もあります。

8当院での取り組み

当院の院長は、厚生労働省が指定する認知行動療法の研修を修了しており、認知行動療法を実施できます。一方で、通常の保険診療の外来は1回あたりの時間が限られるため、毎回の診察で体系的なフルプログラムのCBTをすべて行うことは現実的に難しい場合があります。

そのため当院では、日常の外来診療のなかで、認知行動療法の考え方を背景とした精神療法(短時間の簡易的な認知行動療法)を用いてご相談に応じることが多くなっています。たとえば、お困りの場面を一緒に整理し、考え方のクセに気づくお手伝いをしたり、この記事のワークシートのようなホームワークを活用して、診察と診察のあいだに取り組んでいただいたりします。より専門的・体系的なCBTが必要と考えられる場合には、その旨をご説明し、対応について一緒に検討します。

※どのような進め方が適しているかは、お一人おひとりの状態によって異なります。診察のなかでご相談ください。

9ご自宅で使えるワークシート(ダウンロード)

ホームワークや、ご自身の振り返りに使えるワークシートをご用意しました(PDF・A4・印刷してお使いいただけます)。記入は無理のない範囲で大丈夫です。書きづらいところは、診察のときに一緒に整理しましょう。

▶ 4種類をまとめてダウンロード(PDF)

※これらのシートは治療を補助するツールであり、診断や治療効果を保証するものではありません。

10よくあるご質問(FAQ)

Q. 認知行動療法は、薬を使わずに受けられますか?

A. 症状や状態によります。比較的軽い場合はCBTを中心に進めることもありますが、症状が強いときは薬物療法と組み合わせたほうがよい場合もあります。どの方法が適しているかは、診察で医師にご相談ください。

Q. どのくらいの回数・期間がかかりますか?

A. 内容や状態によって異なりますが、保険診療の「認知療法・認知行動療法」は、一連の治療につき16回までと定められています。実際の回数は、医師と相談しながら決めていきます。

Q. 保険は使えますか?

A. うつ病などの気分障害、強迫症、社交不安症、パニック症、PTSD、神経性過食症などが対象です。不眠症のCBT-Iは2026年6月から保険適用となりました。対象や条件は医療機関によって異なるため、受診前にご確認ください。

Q. 自分でコラム法をやっても効果はありますか?

A. セルフヘルプとして取り組む方も多く、気持ちの整理に役立つことがあります。ただし、うまく進まないときやつらさが強いときは、無理をせず専門家と一緒に取り組むことをおすすめします。効果には個人差があります。

Q. 不眠にも認知行動療法は役立ちますか?

A. はい。不眠症に対する認知行動療法(CBT-I)は、欧米のガイドラインで慢性不眠の第一選択とされており、日本でも2026年6月から保険適用になりました。睡眠薬で十分な効果が得られない場合などに選択肢となります。

つらい気持ちや眠りのことで、お困りではありませんか?

神楽坂メンタルクリニックは、神楽坂駅 1b出口より徒歩1分以内。
お一人おひとりの状態に合わせて、ていねいにご相談に応じます。

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参考文献・出典

本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、診断や個別の治療方針を示すものではありません。症状については医療機関にご相談ください。最終更新:2026年6月

【監修・執筆】永井常高(神楽坂メンタルクリニック院長・精神保健指定医・精神科専門医/指導医)

永井 常高

永井 常高

熊本大学卒 慶應義塾大学医学部精神神経科教室 精神保健指定医(第21030号) 精神科専門医・指導医

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