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【後編】内因性うつ病と適応障害の違い

― 治療・休職・復職・周囲の関わり方 ―

前編では、うつ病適応障害の「成り立ちと症状の違い」を整理しました。その本質的な違いが治療やサポートの違いに現れるため、似たようなものでも本質的な理解が必要になるわけです。単純に診断基準に当てはめて薬を出すようなことをやっていたら、治るものも治りません。どうしてこのタイミングでうつ状態になったのかを、丁寧に問診をして患者さんの人生という文脈の中から読み取り、サポートの仕方を考えてゆく必要があるわけです。
それでは、後編では、「治療と対応の違い」に焦点を当ててみてゆきましょう。

パズル

1. うつ病の治療の柱

うつ病の治療は、ガイドラインでも「休養+環境調整+薬物療法+精神療法」の組み合わせが推奨されています。

1-1. 休養・環境調整

  • まずは「脳のオーバーヒート」を冷ます期間が必要
  • 仕事量や責任を一時的に減らす/休職を検討する
  • 夜更かし・飲酒・過度のスマホなど、睡眠を悪化させる要因を減らす

うつ病の急性期に、「無理に頑張る」「気分転換に旅行に行く」といった対処は、むしろ悪化要因になることもあります。

1-2. 薬物療法(抗うつ薬)

  • SSRI・SNRI・ミルタザピンなどの抗うつ薬が第一選択とされています
  • 効果の実感には通常2〜4週間程度かかり、
    十分な回復まで4〜6週間〜数ヶ月を要することが多い
  • 良くなってからも1〜3年程度の継続内服で再発リスクが下がります

副作用として、

  • 吐き気・頭痛・下痢・眠気・不眠
  • 不安・焦燥感の一時的な増悪(アクチベーション)
  • 若年層での自殺関連行動リスクのわずかな上昇

などが知られており、少量から慎重に開始し、副作用を丁寧にモニタリングすることが重要です。

薬の説明

1-3. 難治例に対する治療

複数の抗うつ薬で十分な効果が得られない場合、下記の代替もしくは増強療法を組み合わせます。

  • 非定型抗精神病薬の少量併用
  • rTMS(反復経頭蓋磁気刺激法)
  • ECT(電気けいれん療法)
  • 気分安定薬(リチウムなど)の増強療法

1-4. 精神療法・心理社会的介入

下記の非薬物療法は、有効なエビデンスのある治療として知られています。

  • 認知行動療法(CBT)
  • 対人関係療法(IPT)
  • 行動活性化
  • マインドフルネス

特に、「休養だけに頼りすぎず、少しずつ活動を取り戻す」という視点(行動活性化)は、慢性化や再発を防ぐうえで重要です。


2. 適応障害の治療の柱

適応障害の治療では、うつ病以上に「環境調整」と「ストレス対処」の比重が高くなります。

2-1. ストレス因への介入・環境調整

  • 業務量の調整・残業の制限
  • 配置転換・部署異動
  • ハラスメントへの正式な対応
  • リモートワークの活用 など

「本人のがんばり」だけで解決できない問題を、制度や組織として調整することがポイントです。

2-2. 心理療法・カウンセリング

  • ストレスと自分の「受け止め方(認知)」との関係を整理するCBT
  • 自分の特性・価値観と、職場文化との「ミスマッチ」を理解する作業
  • 再発を防ぐためのストレスマネジメント訓練

などが中心になります。

カウンセリング

2-3. 薬物療法の位置づけ

  • 不眠・強い不安・パニック症状などに対して、睡眠薬や抗不安薬、場合によっては抗うつ薬が補助的に使われます
  • あくまで「環境調整+心理的な整理」が主役であり、薬だけで根本問題が解決するわけではありません

3. 「休む」の意味の違い

3-1. うつ病:一度しっかりエンジンを止める

うつ病の急性期では、

  • 休職や休学を含めてしっかり休むことが第一選択になるケースが多いです
  • 一方で、症状が落ち着いてきた段階では、行動活性化の考え方に沿って、少しずつ活動量を戻す必要があります

「ひたすら休み続ける」ことが、かえって気力の低下・自信喪失・社会的孤立を深めることもあるため、休養と活動のバランスを主治医と調整していくことが重要です。

朝散歩の風景

3-2. 適応障害:休むだけでは解決しないことも多い

適応障害では、

  • 一時的な休養で体力と気力を回復させることは大切ですが
  • その後、ストレス因のある環境にどう戻るか/戻らないかを冷静に検討する必要があります
  • 休職 → 環境調整 → 段階的復職
  • 場合によっては、部署異動・転職・働き方の見直し

といった選択肢を、「短期的なラクさ」だけでなく、中長期のキャリア・生活設計も含めて考えることが大切です。


4. 仕事・学校との付き合い方

― 休職・復職のプロセス

厚生労働省のガイドラインでは、
心の不調からの職場復帰は次のようなステップで進めることが推奨されています。

  1. 休業開始と休業中のケア
    • 手続きの確認、定期的な連絡、孤立させない配慮
  2. 主治医による「復職可能性」の判断
    • 診断書の作成、産業医との情報共有
  3. 復職可否の判断と支援プラン作成
    • 勤務時間・仕事内容・残業の有無などの具体的な取り決め
  4. 最終決定と復職
    • 短時間勤務・試し出勤などの段階的復帰
  5. 復職後のフォローアップ
    • 定期的な面談・業務量の見直し・再発サインの共有

「医学的に復帰可能」「本人の意思がある」「職場側に準備がある」という三つがそろって初めて、安定した復職と言えます。


5. 家族・周囲ができること(うつ病・適応障害に共通)

5-1. NGワードと望ましい声かけ

避けた方がよい言葉

  • 「甘えているだけでは?」
  • 「気持ちの持ちようだよ」
  • 「みんな大変なんだから、あなたも頑張って」
  • 「そんなことで休んでいたら、この先やっていけないよ」

望ましい関わり

  • 「今はどんなことが一番しんどい?」
  • 「休む決断をしたのは、むしろよく踏み切ったと思う」
  • 「できること・できないことを一緒に整理しよう」
  • 「病院の先生の話、一緒に聞きに行ってもいい?」

うつ病では、急性期の**「励まし」と「気晴らしの誘い」が逆効果**になることがあります。

適応障害では、本人が「自分が悪い」と過度に責めていることも多く、環境側の問題を客観的に見直す手助けが重要です。

ハートの受け渡し

6. 神楽坂メンタルクリニックでお手伝いできること

神楽坂メンタルクリニックでは、

  • 内因性うつ病・適応障害の丁寧な鑑別診断
  • ガイドラインに沿った薬物療法と心理教育
  • 患者さんの人生という文脈を考慮した精神科臨床
  • 必要に応じた産業医や職場との連携(診断書・意見書など)
  • 休職・復職に関する具体的な相談
  • 駅近で、Web予約/問診を活用した、通院しやすい診療体制

を通じて、「診断名」だけでなく、その人の人生全体を見据えた治療計画を一緒に考えていきます。


7. まとめ:診断名は出発点にすぎない

  1. 内因性うつ病と適応障害は、
    • 成り立ち
    • 症状の広がり
    • 治療の優先順位
      が異なる病気です
  2. うつ病では「脳の疲弊を癒し、再発を防ぐ長期的治療」が重要
  3. 適応障害では「環境調整とストレス対処法の習得」が鍵になります
  4. どちらの診断でも、
    • 自分を責めすぎないこと
    • 早めに相談し、周囲と協力していくこと
      が回復と再発予防につながります

「今の自分には、どんな支援が必要か?」
一人で抱え込まず、必要なタイミングで専門家に相談していただければと思います。

希望の手
永井 常高

永井 常高

熊本大学卒 慶應義塾大学医学部精神神経科教室 精神保健指定医 精神科専門医・指導医

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