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精神疾患で休職したら読む|傷病手当金の申請方法と注意点を精神科医が解説

精神疾患で休職したら読む|傷病手当金の申請方法と注意点を精神科医が解説

「休職することになったけれど、収入が途絶えてしまう…」という不安は、精神疾患で休職される患者さんの多くが抱える現実的な心配事のひとつです。しかし、健康保険には「傷病手当金」という、休職中の生活を支えるための制度があります。この記事では、うつ病・適応障害・双極性障害・不安症などの精神疾患で休職された方が傷病手当金を正しく受給できるよう、申請の仕組みから注意点まで、わかりやすく解説します。

監修・執筆:永井常高(当院院長/精神保健指定医・精神科専門医/指導医) 最終更新:2026年6月

1. 傷病手当金とは何か

ポイント:傷病手当金は、業務外の病気・ケガで働けなくなった健康保険の被保険者の生活を支える給付制度です。精神疾患も対象。会社員・公務員などが対象で、国民健康保険(自営業・フリーランス)には原則ありません

傷病手当金とは、業務外の病気やケガによって働くことができなくなった被保険者(会社員・公務員など)の生活を保障するための、健康保険の給付制度です。うつ病・適応障害・双極性障害・統合失調症・不安症などの精神疾患も対象となります。「こころの病気だから申請できない」ということはなく、身体の病気と同じように申請できます。

なお、自営業者・フリーランスが加入する国民健康保険には、原則として傷病手当金制度はありません(一部の自治体・国保組合が独自に設けている場合を除きます)。会社員・公務員など、職場の健康保険・共済組合に加入している方が対象です。


2. 支給される4つの条件

ポイント:①業務外の療養、②働けない状態(医師の証明)、③連続3日の待期を含む4日以上の休業、④その間に給与が支払われていないこと——この4つをすべて満たすと支給されます。

条件①:業務外の病気・ケガによる療養であること

「病気やケガの療養」とは、医師の指示のもと、治療のために仕事を休むことです。医師の指示があれば、入院だけでなく自宅での療養も該当します。うつ病などの精神疾患も対象です。なお、業務上の事由による病気・ケガの場合は、傷病手当金ではなく労災保険の給付対象となります。精神科・心療内科に通院しており、主治医が「仕事を休む必要がある」と判断している状態であれば、基本的にこの要件を満たします。

条件②:働くことができない状態であること

病気やケガによって、これまで携わっていた仕事ができない状態を意味します。「働くことができない(労務不能)」ことについては、医師による証明が必要です。申請書の「療養担当者記入欄」に、主治医が「労務不能である」という証明を記入します。当院では、この証明欄への記入が必要な場合はご相談ください。

条件③:連続する3日間を含み、4日以上休んでいること(待期)

療養のために連続3日間仕事を休んだ場合に、4日目以降の休業日が支給対象となります。この連続3日間は「待期」と呼ばれ、有給休暇・土日祝などの公休日も含まれます。待期3日間そのものは給付の対象外で、4日目から支給が始まります。待期期間を有給休暇で消化することは問題ありません。多くの方が、最初の3日間(待期)に有給休暇を充て、4日目以降を欠勤扱いとして傷病手当金を受給しています。

傷病手当金の待期の説明図(協会けんぽ)
出典:全国健康保険協会(協会けんぽ)

条件④:休んだ期間、給与が支払われていないこと

連続3日間休み、4日目以降の休業日のうち、給与の支払いがない日が支給対象となります。給与が支払われている場合でも、その額が傷病手当金の額より少なければ、差額分が支給されます。


3. 受給できる金額:いくらもらえるか

ポイント:おおよそ「月給の約3分の2」が受給の目安です。正確には、支給開始日以前12か月の標準報酬月額の平均をもとに計算します。

傷病手当金の1日あたりの金額(支給日額)は、以下の式で求められます。

支給日額 = 支給開始日以前12か月の各標準報酬月額の平均 ÷ 30日 × 2/3(約66.7%)

「支給開始日」とは、初めて傷病手当金を受け取った日のことです。標準報酬月額には、給与だけでなく賞与や各種手当も反映されます。わかりやすく言うと、おおよそ「月給の約3分の2」が月単位で受給できるイメージです。

計算例(月給30万円の場合):標準報酬月額30万円 ÷ 30日 = 1万円。その3分の2は約6,667円が1日あたりの支給額です。1か月(30日)分では約20万円の受給となります。

なお、標準報酬月額は実際の月給とは必ずしも一致しません。ご自身の標準報酬月額は、給与明細や加入先の健康保険組合・協会けんぽにご確認ください。


4. 支給期間:いつまでもらえるか

ポイント:支給開始日から通算して1年6か月。2022年1月の改正で「通算化」され、途中で復職した期間はカウントされなくなりました。

2022年改正で「通算化」が導入されました

改正後(2022年1月1日以降)の支給期間は、同じ病気やケガについて、支給開始日から通算して1年6か月です。改正前は「支給開始からカレンダー通りに1年6か月」だったため、途中で復職して給与をもらっていた期間も1年6か月に含まれ、残りが目減りしていました。改正後は、実際に傷病手当金が支給された日数だけを通算して1年6か月に達するまで受給できるため、途中で復職した期間はカウントされません

精神疾患では、休職→復職→再休職というケースが少なくありません。この改正により、一度復職した期間は1年6か月にカウントされなくなったため、実質的に保障が手厚くなりました。入退院や休職・復職を繰り返しながら働く方にとって、有利な制度です。

傷病手当金の支給期間の通算化の説明図(厚生労働省)
出典:厚生労働省

5. 申請の流れ:ステップごとに解説

ポイント:申請書は本人・会社(事業主)・主治医の三者で記入します。申請は「実際に休んだ期間が終わった後」に行うのが基本で、通常は1か月ごとに繰り返します。

Step 1:会社に休職を申し出て、申請書を受け取る

まず職場(人事担当者)に休職の意向を伝え、「傷病手当金支給申請書」を受け取ります。健康保険組合や協会けんぽのウェブサイトからダウンロードできる場合もあります。申請書は、本人記入欄(被保険者本人)・事業主記入欄(会社・事業主)・療養担当者記入欄(主治医)の記入欄で構成されています。

Step 2:本人記入欄を記入する

本人記入欄には、氏名・生年月日・住所・健康保険の記号番号・振込先口座・休んだ期間(申請期間)・傷病名・発症日などを記入します。健康保険の記号と番号を記載する必要があるため、保険情報を確認しながら漏れのないように記載しましょう。

≫ 傷病手当金支給申請書の記入の注意点(協会けんぽ)

Step 3:主治医(療養担当者)に証明を依頼する

当院(神楽坂メンタルクリニック)への申請書の持参について

当院で、傷病手当金申請書の療養担当者欄への記入を承っています。受診時にお持ちください(記入には数日〜1週間程度のお時間をいただく場合があります)。証明にかかる費用は傷病手当金意見書交付料(100点)として算定され、これは保険診療です。窓口でのご負担は自己負担割合に応じた額となり、3割負担の方で約300円です(証明期間ごとに算定されます)。

重要:申請書には「実際に休んだ期間」しか記入できません。まだ休んでいない将来の期間(休む予定でも)について主治医が証明することはできません。申請は「休んだ期間が終わった後(または当月末)」に行います。

Step 4:事業主記入欄を会社に記入してもらう

会社の担当者(人事・総務)に申請書を渡し、事業主記入欄(給与の支払い状況・出勤状況など)を記入してもらいます。

Step 5:健康保険組合・協会けんぽに提出する

すべての書類がそろったら、健康保険組合(または協会けんぽ)に提出します。会社経由で提出する方法と、直接提出する方法があります。会社によって異なるため、事前に確認しておきましょう。提出後、給付金が振り込まれるまでは申請後おおむね2週間〜1か月程度かかります。書類に不備がなければ、協会けんぽの場合は受付日から10営業日以内に支払われるとされています。

Step 6:以降は1か月ごとに繰り返す

傷病手当金は、1回でまとめて長期間分を申請するのではなく、1か月ごとに定期的に申請するのが一般的です。給与の支払いの有無を証明するため、給与の締切日ごとに申請するとスムーズです。


6. 精神疾患特有の注意点

ポイント:労災との切り分け、有給休暇の使い方、退職後の継続給付、失業手当との関係、障害年金への移行など、精神疾患の休職で見落としやすい点を整理します。

注意点①:「業務上の病気」とみなされた場合は労災扱いになる

職場でのハラスメントや過重労働が主な原因と認められた場合、傷病手当金ではなく労災保険の対象となる可能性があります。労災認定を受けた場合の給付は傷病手当金より手厚い場合が多いため、心当たりがある方は主治医や労働基準監督署にご相談ください。

注意点②:有給休暇の使い方に注意する

有給休暇の消化中は給与が支払われているため、その間は傷病手当金は支給されません。ただし、最初の3日間(待期)に有給休暇を充てることは問題なく、待期成立後の4日目以降を欠勤扱いにして申請するのが一般的な流れです。有給休暇を長期間使い切ってから申請することも可能ですが、給付開始は遅くなります。

注意点③:退職後(資格喪失後)も受給できる条件がある

在職中に傷病手当金を受け取っていて、残りの期間があるうちに退職する場合でも、一定の条件を満たせば、退職後も引き続き受給できます(継続給付)。主な条件は次のとおりです。

  • 退職日まで継続して1年以上、健康保険の被保険者であったこと
  • 退職日の時点で傷病手当金の受給条件を満たしていること(退職日に出勤していないこと
  • 退職後も同じ病気で継続して働けない状態であること

特に注意すべきは、退職日も休業していることです。退職日に「挨拶のために出勤した」場合でも、その日は労働があったとみなされ、継続給付の要件が途切れる可能性があります。退職前に必ず主治医・会社・健康保険窓口にご確認ください。なお、退職後に任意継続へ切り替えてから新たに発生した病気・ケガは継続給付の対象外です(在職中からの継続給付とは扱いが異なります)。

退職後の継続給付の説明図(協会けんぽ)
出典:全国健康保険協会(協会けんぽ)

注意点④:失業手当との同時受給はできない

傷病手当金の受給中は「働けない状態」であるため、「すぐに働ける状態の人が仕事を探している場合にもらえる」失業給付(雇用保険の基本手当)とは同時に受給できません。退職後に状態が回復し、求職活動を始める段階で、はじめて失業手当の申請を行います(状態が回復するまで失業手当の受給期間を延長する手続きもあります)。

注意点⑤:障害年金との関係

傷病手当金(最大1年6か月)が終了した後も就労困難な状態が続く場合は、障害年金(精神の障害)の申請を検討することになります。障害年金の手続きは複雑なため、精神保健福祉士や社会保険労務士にご相談ください。

注意点⑥:申請書の「申請期間」は実際の休業期間のみ

くり返しになりますが、主治医はまだ来ていない将来の期間について「労務不能」の証明をすることができません。申請は必ず「実際に休んだ期間が終わってから」行ってください。「1か月分まとめて月末に申請する」のがスムーズな方法です。


7. よくある質問(FAQ)

Q1. 初めて精神科を受診した日から傷病手当金をもらえますか?

A. 受診後、連続3日間の待期を経た4日目以降が対象となります。初診日より前から休んでいた場合でも、医師が証明できるのは「実際に診察した日以降の期間」です。そのため、できるだけ早い段階での受診をおすすめします(紹介状など客観的資料があれば過去分を遡って証明できる可能性もあるため、加入先の保険者にお問い合わせください)。

Q2. 傷病手当金を申請していることは会社にわかりますか?

A. 申請書には事業主記入欄があり、会社が記入するため、申請の事実は会社が把握します。ただし、傷病名の詳細まで会社に開示する義務はなく、記載方法によっては精神疾患であることを明示しないことも可能な場合があります。傷病名の記載方法については主治医にご相談ください。

Q3. 休職中に少しアルバイトをしたら受給できなくなりますか?

A. 傷病手当金は「働くことができない状態」であることが条件です。休職中に別の就労(アルバイト等)を行うと、「労務不能」の証明が困難になり、受給が取り消される可能性があります。休職中の就労は慎重にご判断ください。

Q4. 同じ病気で再休職した場合、また1年6か月もらえますか?

A. 2022年の改正で「通算化」が導入されたため、過去の受給日数が引き継がれます。たとえば1回目の休職で6か月分受給し、復職した後に同じ病気で再休職した場合は、残りの12か月分が上限となります(合計1年6か月が最大)。

Q5. 主治医が変わった場合はどうなりますか?

A. 主治医が変わっても、傷病手当金の受給資格自体は変わりません。ただし、申請書の療養担当者欄は現在の主治医に記入してもらう必要があります。当院に転院された場合も、継続して証明書類の作成が可能ですので、ご相談ください。


8. 当院でのサポート

神楽坂メンタルクリニックでは、精神疾患で休職される患者さんの傷病手当金申請に関して、以下のサポートを行っています。

  • 傷病手当金申請書(療養担当者欄)への記入
  • 休職に関する診断書・意見書の作成
  • 休職中の定期通院(通院が傷病手当金申請の証明に必要な場合があります)
  • 復職時の段階的就業に関する主治医意見書の作成
  • 傷病手当金終了後の障害年金申請に関するご相談(社会保険労務士のご紹介を含む)

傷病手当金や休職に関するご不明な点は、診察時または受付スタッフにお気軽にお申し付けください。経済的な不安を軽減し、安心して療養に専念できる環境を整えることが、回復への第一歩です。


9. まとめ

項目 内容
対象会社員・公務員など健康保険加入者(精神疾患も対象)
支給額おおむね「月給の約3分の2」
支給期間通算1年6か月(2022年改正で復職期間はカウントされない)
申請1か月ごとに、本人・会社・主治医の三者で書類を作成
退職後条件を満たせば受給継続が可能

経済的な心配が重なると、精神的な回復の妨げになります。使える制度を正しく理解し、安心して治療に向き合っていただければと思います。

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。制度の詳細や運用は、加入されている健康保険組合・協会けんぽ等により異なる場合があります。実際の申請にあたっては、必ず加入先の保険者・お勤め先の担当窓口にご確認ください。

ご予約はこちら(オンライン予約)

神楽坂駅 1b出口より徒歩1分以内/精神科・心療内科


参考資料

【監修・執筆】永井常高(神楽坂メンタルクリニック院長・精神保健指定医・精神科専門医/指導医)

本ページは一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の制度適用や金額を保証するものではありません。制度内容は改正されることがあり、運用は保険者により異なる場合があります。最新かつ正確な内容は、加入先の健康保険組合・協会けんぽ、お勤め先、年金事務所等にご確認ください。

永井 常高

永井 常高

熊本大学卒 慶應義塾大学医学部精神神経科教室 精神保健指定医(第21030号) 精神科専門医・指導医

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